「…日番谷くん。仕事終わった?」
「ああ、終わった。お前が来るとかほざいたからな」
「だって、今日は逢ってなかったもん!」
「昨日は逢ったじゃねぇか」
「…昨日は昨日、今日は今日だもん」














やっぱりあたしと日番谷くんの考え方は違うと思う。だって、だって今日逢えなくてもいい、とかいうんだもん。あたしはいつだって逢いたいのに。やっぱりあたしの気持ちは分かってくれない。いっつもそうだもん。日番谷くんは肝心な時に、逢えないとか、無理とかで片付けちゃう。あたしはそれくらいの存在ってことなの!?そりゃあ、あたしは日番谷くんの周りにいる美人な人とか大人っぽい人とか我儘じゃない人とかじゃないから、しょうがないんだろうけど。我儘なんだろうけど。子供っぽいかもしれないけれど。




「…で、何しにきたんだよ」
「何って、何も」
「用はねぇのか」
「その通りです」
「んで、お前の目的は何だ」



さっさと答えろ、と瞳で言ってくる。目的というか、用というか、さっき云ったんですけどね。日番谷くんはどうせあたしに好きとか愛してるとか云ってくれないし(ココ重要だと思うの)、好きじゃないとか云いそうで、怖い時がある。だって日番谷くんは本当にもてる。恐ろしいくらいもてる。だって今日もあたしの隊の中で告白するっていう子がいたんだもん。日番谷くんが何て答えたのか知らないけど。…惚れちゃうのはしょうがないよね。こんなカッコイイ人が近くにいたら誰だってそうなるよね。…どうして、あたしといてくれるんだろうと思うときがたくさんある。泣きそうになって、1人で泣き続けたこともある。そんなことは、知らない。真っ赤に瞳を腫らしていても気付かない。しょうがない、隊長だもの。いつもその言葉で片付ける、自分の心の中で。


「邪魔なら、もう帰る。勝手に来たこっちが悪いから、ね」
「…はぁ、お前は何でそうなんだよ」
「え?」
「だから、さっさとソコに座れ」


ソコ、とは近くにある椅子のことである。あたしは立っていて、当然日番谷くんは椅子に腰掛けている。フン、と怒っているような態度は見るからにわかった。何で、怒っているかはわからないけど、原因はあたしなの、かもしれない。それ以外見当がつかないもの。


「あ、の。な、何か?」
「何でも答えてやる。…聞きたいことあるんだろ」
「え、えっと、それは…」
「ないなら、その腫らした目は何だよ」


初めて、赤く腫れた目について触れた。何だ、気付いていたんだ。やっぱり何もいわなかっただけだったんだ。しょうがないんだよ、そう言い聞かせることしかできないあたしは、なんてよわむしなんだろう。ばかみたいだ。自分が自分じゃないみたいだ。あの告白した女の子の方が日番谷くんにあってる。何で、こんなにじぶんは卑屈なんだろう。じぶんがすきじゃないから、こんなこともいえるんだろう。本当、あたしってばかだ。


「べ、別に。何でも、ない」
「お前のその心配そうな目は、アイツのことだろ。確かと同じ隊のあの女」
「…あはは!やっぱりその子と付き合いたい?いいよ、別れても。だってあたし…」
「お前何勘違いしてやがる」
「だってあの子可愛いもん。あたしなんか目にないよ!」
「可愛いとか可愛くないとか関係ないっての。そんなにオレは信用ないのかよ!」


バン!、と机を叩く。1、2枚の書類がヒラヒラと宙を舞う。何が起きてるのかわからなくて、目の前が真っ暗だ。日番谷くんは眉に皺を寄せて怒っていた。何で、怒ってるの。


「だって、みんな日番谷くんが好き、なんだもん。あたしって本当に彼女?って聞きたくなるもん」
「…俺がそうやっていえば、満足なのか」


その言葉に、小さく頷く。日番谷くんに云ってもらえれば全てが楽になる。解放される。どうして、ここまで溺れてしまったんだろう。


「それなら、何度でも云ってやるよ。お前が望むなら」
「…あたしが、彼女でも、いい?」
「当たり前、だろ。あの女なんて断った。お前がいるから」


うん、と云う。ただ、嬉しかった。何でこの人の言葉を信じなかったんだろう。この人の傍にいれば、どんなことでも倖せなのに。今ごろ気付くなんて遅い。こんな優しさに包まれていたら、どんな嫌な事も忘れそう。


「好きだよ。日番谷くんがいれば、倖せだよ」
「…いつも大袈裟だなお前。別にいいけど」
「だって、日番谷くんがいればいいもん」
「そうか、お前も段々甘えるようになったな」
「それが、彼女の特権でしょ」


いつも窓から光が溢れているなんて知らなかった。こんなに輝いているなんてしらなかった。いつも通りの場所。けれど貴方がいるだけで、世界が色づくよ。風が吹いて、花びらが揺れる。世界は少しずつ変わっていくけれど、日番谷くんへの想いは決して変わらない。だって、いつまでも貴方の傍にいたいもの。いつだって一緒だよ。いつもと同じキスを交わしたけれど、ほんの少し甘く感じた。

貴方といることで、貴方と巡り合えたことで、貴方と喋れることで、倖せだと感じる。違う時でも、違う場所でも、その倖せの風を受けることができるよ、貴方が一緒なら。


ぼ く い ろ に そ ま れ い つ ま で も ふ あ ん に な ら な い よ う に …