今日は珍しく榛名くんはいつもより遅く自主練していくといった。待ってるのもうっとおしいと言われると思ったけどそんなことはなかった。榛名くんは待ってろよっていってくれた。前あたしに対して素っ気ない態度だったけれど今はそんなそぶりをみせないから嬉しい。一応付き合ってるから当たり前のことだけれど。それで前秋丸くんに「榛名はね、本当は最初からさんのことが好きだったんだ」と教えてくれた。秋丸くんが信用できないとかじゃないけれど嘘だと思った。あのカッコイイ榛名くんが。榛名くんに聞いたけれど「別に」といってそっぽを向いた。否定しないってことは本当って思ってもいいんだ。嬉しかった。彼を見てるとなんでもできそう。そんな気がする。彼が野球をしてるときの一生懸命やれる姿が好き。もちろんほかにも好きな所もあるけれど。 「もう片付けやるからちょっと待っとけよ」 「うんっ」 タオルを首にかけた榛名くんがあたしに告げた。今日の追加自主トレは投球練習(秋丸くんはいないけれど)でグラウンドにはあちらこちらにボールが転がっていた。ボールを拾ってる間、思ったことがあった。榛名くんなら他の学校でかなりの活躍をしてたと思う。武蔵野を選んだ理由は加具山先輩にこっそり聞いた。榛名くんは秘密にしてといったけれど先輩が彼女ならといってくれて教えてくれた。でもほかにもいい学校があったと思う。武蔵野ははっきりいってサッカーの方が人気があるのだ。だからこんなに野球が好きな人が来る所ではなかった。なのにここの学校で甲子園に行くとさらりといってしまう、ある意味すごい人だ。でも榛名くんがここを選んでいなかったらあたしと榛名くんは出会ってなかった。だから嬉しかった。あたしがいくら野球が好きでも甲子園へいって榛名くんと喋れていなかったと思う。ただ電光掲示板で表示された榛名という投手というだけの知っていただろう。あたしがしっていても榛名くんはあたしを知らない。それだけで切なくなる。榛名くんの決断だけであたしたちの出会いが決まったんだ。 「こら、何溜め息つきながら球拾いしてんだ」 「ひゃっ!?」 頬にいきなり冷たいものがあたった。それは冷却パックで怪我をしたときに使うもの。それを持っていた手の先にはニヤリと笑った榛名くんがいた。もうっ!そういうこと止めて、といっても、お腹を抱えて笑いながら、わりぃ、わりぃといった。榛名くんはこういうことをしても全然っ悪気はない。 「あはは、悪かったって!」 「ソレ、笑っていうことじゃない、榛名くん酷い!」 「そんなおこんなって。からかってみただけ」 「榛名くんなんて待たずに帰ればよかったっ!」 あたしは榛名くんの玩具じゃないんだから。もう怒った、あたしだってこういう時は怒るんだから!…とは思うけど絶対榛名くんの巧みな言葉によってあたしは翻弄される。いっつもはこうやってあたしは機嫌をなおす。はぁ、こんなの嫌だ。いつもあたしばかり緊張してるみたい。榛名くんはいつも余裕な顔をしていていいなと思ってしまうんだ。 「、機嫌直せって」 「別にあたしは怒っていません!」 「怒ってんじゃん。いつもからかってるだろ」 「榛名くんはいいよね、いっつも余裕でさっ」 嫌味ったらしくいってやった。あたしはこれくらいのことしかできない。びゅうっと強く冷たい風が吹いてきた。あたしは寒気がして、くしゅんとくしゃみをした。 「ほら、これでも着とけ。こんなもんで悪いけど」 「…榛名くんが寒くなるよ」 「これでも身体は丈夫なの」 「…ありがとう」 あたしは朝暑かったので何ももってこなかった。榛名くんが貸してくれたのはジャージだった。あたしには大きくて着てみてもぶかぶかだった。やっぱり男の人は肩幅がひろいんだなと思った。いつもの榛名くんの匂いが鼻をくすぐった。 「ぶかぶかだな、お前」 「しょうがないでしょ。でもあったかい」 「そりゃ、俺のだからな」 「汗くさいけどね」 「それいうなよ。でも結構自分のもん、彼女が着てるってイイ感じ」 「うっわ、榛名くんやらしい」 「そういうお前だって、あんときはすげぇじゃん」 「ばっ…!な、何いってんの…!」 「んじゃあ帰るか」 「アレ、片付けは?」 「お前が片付けてる間に終わったんだよ」 あ、そっかといって、地面に置いてあったカバンを持って歩き出した。榛名くんが手を差し出してきたから、手を繋いだ。榛名くんは大きくてごつごつした手でこんな手なんだと思った。思わず笑った。 「何、笑ってんだよ」 「ううん。何にもないよ」 「何だよソレ、ま、いいけど」 あたしと榛名くんも笑いながら、家に帰った。もっと榛名くんと帰っていたかったけれど。 暗闇の中であなたと二人で END... 05.10.20 --- 榛名さん、は・る・な・さーん。ああこの方大好き。似てないけど。自己満足作品。 |